種籾には稲特有の様々な病原菌(e.g.バカ苗病菌)が籾の外側や籾と玄米の間に潜んでいて、繁殖環境が整うのを待っている。
種籾の種子消毒には、@数醜類の農薬を溶かした溶液に種籾を浸し、稲特有の菌を死滅させる、A繁殖が旺盛な酵素を溶かした溶液に浸し、彼らの助けを借りて稲特有の菌の繁殖を抑える、B種籾を温湯に一定時間浸して、稲特有の菌を死滅させる、等の方法がある。
高島氏は種籾に付着している稲特有の菌を処理する方法として、温湯消毒で対処している。
ちなみに耕さない田んぼの稲つくりでは、酵素の力を借りる方法で種籾の菌の処理を行っている。
温湯消毒には温度管理が自動化されて温湯消毒装置が製品化されており、昨年から導入しているが、それ以前はお風呂のお湯の温度を調節しながら行っていたらしく、その頃と比べたら格段に作業が楽になったとのことだった。

<稲特有の菌の消毒に使う温湯消毒装置>
「60度のお湯に約10分浸す」作業は、電気を使って温度管理が自動化されており、種籾を温湯に10分間浸すとアラームで知らせてくれたりと、作業が簡素かされている。
温湯に種籾を浸した後、冷たい水に浸し、できるだけ早く、種籾の熱を冷ます作業があるが、その作業は数分で終了する。

<種籾をお湯に浸し、温湯消毒している様子>
温湯消毒装置を使った種籾の菌の処理は始めての経験だった。
この温湯消毒装置は約26万円と比較的高価であること、200Vの電源を用意する必要があり、年に一度しか使わない作業の投資と考えると小規模の農家だと厳しいが、グループ単位で共用であれば導入したいと思うほど、温湯消毒装置を使った作業は簡単であった。
ただ、この作業で使っている水は湧き水を使っており、塩素が入った水道水は御法度である。
また、この作業の前に、種籾の選別が行われているが、高島氏は塩水選で使う塩の処理が環境に優しくないとの判断から塩水選ではなく、唐箕を使い、通常よりも風量を強くすることで、より実の詰まった種籾を選別しているそうだ。